Cuaba Diademas / クアバ ディアデマス

形状:Diademas(55×233) 5コフィン入DB Box Code:EMA OCT 08
2012/10/5 Cigar Oneにて購入 $119

 いつの間にやら廃止になっていたディアデマス。昔は自分に合わない葉巻だと考えていた。当時はクアバならディスティングイドスがお気に入りで、あちらはどちらかというとクリアな甘さが特徴的な葉巻、翻ってこちらはコクとガス香が強く、言ってしまえば苦手な味だった。昔の自分には、ディアデマスという葉巻はディスティングイドスの劣化版にしか思えなかった。しかしあの頃とは大分感じ方も変わった、今ではどう感じるだろう? ゴールデンウイークで時間のある今こそ、この葉巻を試すのに絶好の機会だ。

 銀色の紙製のフォイルを剥がすと御目見えするディアデマス本体は、全体的に薄くブルームを纏っており、姿形も整っていて美しい。この時期のハバノスとしては珠玉の出来、さぞ腕の立つトルセドールが巻いたのだろう。こちらも自然と背筋が伸びる。ラッパーには非常に美しい葉が使われている。葉脈も目立たず、手触りも滑らか。油分は枯れているが甘い香りが立ち上っている。コイーバやトリニダッドとはまた違うベクトルで上質だとわかる葉だ。これは期待してしまう。状態としては少々乾燥気味で、揉むのは少し怖い。フラットカットして空吸いすると、ドローは少々悪い。これだけの長尺物なので、ある程度は仕方ないだろう。

 着火すると、柔らかなレザーから砂糖水とオークモスが立ち上ってくる。一番太い部分に差し掛かると、シトラス系のさっぱりとした香りが後味に加わる。ガス香が激しく噴き出す。カラメルの香味と野趣あふれるムスク。サヤエンドウと甘い木の板。溢れ出すパパイヤやライチの果汁。口の中に残る甘みがすっきりとしていて実に好印象。煙量豊富で味は濃厚だが、強さはない。ライトストレンクス。くぐもって霧がかかったような味わいで正体がつかめない。

 煙が非常に滑らか。甘みが強くなってきて栗や黒土の香味となる。こっくりとした甘みでコイーバを連想するが、コイーバよりも甘みがクリアでガス香が強い。しかし陶酔するには十分な美味しさである。強さが増してきて、ミディアム程度の強さに。

 鯵の塩焼きの香ばしい味わい、その跡に赤福が置いてある。魚の旨味が強く、その裏に粘土や岩、黒土などの味わいが目立つ。その更に向こうにオレンジや甜菜糖の甘みがあり、この甘みが長く余韻として残る。ほぼずっとガス感があるが、時折表に現れる以外は後ろに回っている。他の香味に強く押されて、後ろに追いやられているかのようだ。オレンジや甜菜糖の甘み、パパイヤやライチの果汁がシャインマスカットの香味に変化してゆく。

 抹茶と凄まじくコク深いカラメル。煙に刺々しさが出てくる。オークモスと粘土、シャインマスカットも継続している。時折、上品なマロングラッセが強烈に出てきて、馥郁たる香味が長く鼻腔に残る。美味い、殊更長く余韻に残る甘みが実に良い。陶酔しすぎて灰を服の上に落してしまう。

 ラスト、いきなりチョコレートクリームが噴き出してくる。シャインマスカットが次第にマスカットキャンディに変わっていく。これだけの長尺物にも拘らず、限界まで吸って終了。

 木のうろから噴き出すガスは幻想を引き出す魔法のガスで、オークモスやアーシーな香味が揺らめきながら存在する幻想の森だった。ディアデマスを正体が掴めない葉巻たらしめているのは、この揺らめく蜃気楼のような土と木とガスの香味に、影のようなレザーが合わさるからに他ならない。重心が低い味わいなのにどこか定まらない、往く宛てのない旅人のような煙だ。そして吸い進めるうちに、この森から少しずつ離れていくようで、離れていったその先には恐ろしく余韻の長い果実や栗などの甘みが流れている。空想から現実に戻っていくような、未来から過去を眺めているような。この葉巻は、不思議な郷愁と未来への希望を掻き立ててくれる。
 いつまでも余韻として残る、クリアで奥深い甘みがこの葉巻の特徴だと思う。およそ4時間の喫煙時間、予想以上の長丁場だったが、飽きることなく吸いきれた。いつまででも吸っていたいような魅力ある葉巻で、以前とは打って変わってこの葉巻の大ファンになってしまった。もう生産されていないのが残念でならない。

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