形状:Mágicos(52×115) 10本入SLB Box Code:AME JUL 12
2012/11/20 La Casa del Habano Humburgにて購入 95€
ラ・カサ・デル・ハバノ限定品のオヨ、エピキュア デ ルクセ。2012年のリリースで、急ぐこともなく割とすぐに入手できた。僕はオヨのエピキュアシリーズ、特にエピキュアエスペシャルが大好きだったので、このデ ルクセにはかなり期待をしていた。何回か試した結果として、この葉巻はすごく振れ幅が大きい。美味しい時は滅茶苦茶美味しく、美味しくない時は本当に今一つ。今までに箱の半分ほどを試しているが、美味しい時と美味しくない時が見事に半々だ。今日の一本は美味しいといいなぁ。
葉脈の目立たない、やや油分の枯れた美しいラッパー。余談ではあるが、このデ ルクセ、管理が非常に難しい。ラッパーが薄くて特にフット部が傷みやすい。これは購入当初からそうだ。他の葉巻に比べて、このデ ルクセだけがダントツで傷みやすい。
閑話休題、ずんぐりむっくりで愛らしい佇まい、ただし箱の中で並んでいる葉巻たちを見ると太さのばらつきがすごい。特に今回の一本はリングゲージ50のロブストより若干細かったりする。これはEL2010のショートロブストスTなどでもあったことだ。このあたりの「太くて短い」葉巻は、あまり上手でないか初心者のトルセドールが巻いているのだろう。
状態としてはふかふかして良い触り心地だが、もう少し加湿してやっても良かったかもしれない。ドローは軽すぎる。
着火。強さはなかなか、エピキュアシリーズでは強い方だろう。ル オヨシリーズ位の強さはありそう。黒糖、枯れ葉、レザー、かすかに花の香りと花の蜜の甘み。黒糖には深い熟成感。軽そうな香味が多いにもかかわらず、地を這うような力強さを感じる。しばらくすると、浮くように軽い爽やかなシダーと白檀の香り、重いオークモスの地層の下にメタリックさが隠れている。白粉のような粉っぽい煙。蜂蜜を抹茶で薄めたような甘さ。霧立ち込める森林の中で、気まぐれで地表にひょっこり顔を出したモグラ、そんなものにでもなったかのような。一吸いの中でも味に変化があり、しかも熟成感も感じる。大変に美味しい。この箱でも白眉の出来。LCDH限定ものに共通した、癖のあるべたべたした甘さがあるのだが、くどさを感じない。味わいの多彩さでカバーしているのか? 随分ときわどいバランスに感じる。
味わいの中心がオークモスになり、煙が抜ける時の香りにパッションフルーツとミント。甘みに至極官能的な滑らかさが加わる。魔女が作ったのではないかと思うほど物語的で現実感の欠落した、甘くて官能的なチョコレート。惚れ惚れする。ムスクの香り、ビスケットと飴玉の味わい。ベッタベタに甘い。やがて重厚で苔むした土に下支えされたオレンジが出てくる。緻密な岩に黒色火薬、この岩の中をオレンジの果汁が血液のように流れている。硬い岩の中から溶岩の飛沫のようにパッと花咲く鮮烈なオレンジ。白粉のような粉っぽい煙はどうして軽く感じない。重力を制御され、粒子を固定化されているかのように、この煙を動かすのには力が要る。曇り空の海岸線に流れ着いたペットボトルのような。
ここまで強さの面ではほぼ変化がない。いや、軽くなっているようにさえ感じる。こんなことあるのか、珍しいな。コクが強まり、塩味すら感じる。さっと炙って焼き肉のたれにたっぷりと浸した柔らかいカルビ、この表現が恐らく今の味わいに一番近い。くぐもった海の匂いと銀杏、ホワイトペッパーと少々のメタル感。メタル感は通常不快だが、この場合はホワイトペッパーと合わせて後味をさっぱりとさせてくれるのに一役を担っている。ここに至って喫味をさっぱりとさせてくれる要素が加わるのは嬉しい。ラストは粘土のにおいが強まり、オレンジキャンディが強く主張する。透明感のあるフルーティな甘み。持てなくなるほど熱くなってきたので終了。
めっちゃ美味しかった。ベタベタに甘いがくどさを感じさせないのは良かった。甘い葉巻が苦手な人にはお勧めできないが、案外吸えてしまうのではないかとも思う。短い尺の中にこれでもかと詰め込まれた多彩な香味は非常に魅力的。そして何より、これだけ短くとも「もう一本吸いたい」とはならず、一本で充分に満足させてくれる。価値ある一本だが、香味の主張が強いので「毎日吸いたい」とはならない。だから10本入SLBでのリリースなのだろう。よく考えられていると思う。
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